とある海外系OTA(Online Travel Agent)が、国内のとある大手ホテルチェーンから名指しで指摘をされたと、ニュースになっていました。
これ、大きな流れに繋がればいいなぁ。
いったい何が起きているのかというと、その海外系OTAの契約宿、あるいは提携先のOTAやサービス上の客室在庫について、
①独自の割引または割増をして販売
②事前に確保した上で自社客室在庫として販売
③在庫数が無いのに販売
④内容を変更して販売
をしています。
①については、簡単に言えば“転売”とも言えますが、これは“提携”という関係の中においては、割引・割増が適正な範囲であれば当然に許容されるものです。
しかしながら、割引については宿側にとっては利益を損なうことにもなるので、例えば提携先が独自で行っているセール等の価格は援用されることですら、通常はありません。 割引分をこの海外系OTAが負担するということも、手数料収入が主となる事業ではメリットがありません。
割増に関しても、適正な範囲となるのは商品販売にかかる手数料分ですが、複数の提携先を介しているときはより割増が為されることもあり、予約者からすればデメリットになってしまいます。 価格比較サイトが認知されているこの頃においては、そもそも売れにくくなるので、販売する側としてもデメリットですよねぇ。
②については、価格の低い段階で先行してこの海外系OTAが提携先の客室在庫を担当者名義等で事前予約をし、その後自社への予約があったものにその事前予約を割り振っているというもの。 宿側からすれば、販売されていることに変わりはないのですが、事前予約分の宿泊者名義等が変更されるまでは、“予約無し”の状態。 宿側は見付からないと回答し、予約者は予約できていないものと思って重複予約をする可能性が高まります。
③については、提携先が重なっていればいるほど起こりやすく、システム上の物理的な問題です。 というのも、宿側としては、1次販売先となる国内OTAや海外系OTAに客室在庫を登録し、実際の残室数に応じて変動させています。 提携先はその変動されたデータを直でリンクさせておけば1次販売先での予約となるために影響を受けませんが、これをモジュール等を介して自社在庫として変動させていると、タイムラグにタイムラグが重なります。 ただ、その間にも当然、予約者は予約を入れるので、宿側としては予約データが届けばオーバーブックに、届かなければそもそも“予約無し”の状態になるのです。
④については、①~③にも関連しています。 利益を上げたいからなのか、事前に確保した在庫が余るのを避けるためか、予約を受け付けたのに在庫が無くなっていたからか。 例えばベッド数が異なる、客室の広さが異なる、設備が異なる。 名称も異なれば、そもそも宿側に存在すらしていない客室タイプが販売されていることもあります。
③もそうですが、最も厄介なのは、チェックインの際に予約者・宿泊者と宿との間でトラブルになるということ。 予約者・宿泊者は、予約が予約したままにあるものと認識しています。 逆に、宿側では、届いた予約データが確かなものであると認識しています。 そしてそれぞれの認識に差が生まれていることは、どちらのせいでもないのです。
そして、宿側では、実は何もできないんですよね・・・・・・。
できることは、1次販売先に問い合わせることのみ。 1次販売先はそれを2次販売先となる提携先へ伝えることしかできず、その先も同じです。 一方で、予約者・宿泊者は予約先である最終販売先へ問い合わせることが可能ですが、その最終販売先は提携元に伝えることしかできず、その先も同じです。 双方がその流れで落としどころに辿り着けば、予約の変更やキャンセルが可能となりますが、実はこの海外系OTA、提携先へのアクションを取らずに済むように、“キャンセル不可”というおまけまで付けていたりします。
観光というのは世界的に見ても留まることを知らない巨大産業ですが、そこに利権を絡めて脆弱なシステムや不確かなサービス、情報操作が行われているのも事実です。 「最大50%OFF」って文言が飛び交うことがありますが、甘い言葉に踊らされず、現実的に信頼のできるシステムやサービスを利用するように、知恵や判断力を付けていかなければいけませんね。

